秘密
 

SIDE.今野珠子
 



 
「あれ」
 

 
その手のお弁当はどうしたの?
 

そんな珠子の疑問もすぐに解決された。
悠平の背後に好美がいて、じっとこちらの様子を伺っているのに気付いたのだ。
珠子は馬鹿にされた気分になり、腹が立った。
もちろん好美にも、悠平にもだ。
 

 
「お弁当……」
 

「ああ、これは」
 

 
悠平は明らかに動揺する素振りを見せた。
そんな様子が更に珠子を怒らせた。
 

 
「それっ……先生から?」
 

 
できる限り珠子は悠平に優しく言った。
しかし次第に珠子は、怒りの中に切なさの混じる哀しみの気持ちを抱き始めた。
 

 
「……ああ」
 

 
目も合わせず悠平は頷いた。
そして珠子は更に哀しくなった。
 

 
「そう……」
 

 
珠子は二つの弁当を抱えたまま、一度も悠平の方を見ることなく走り出した。
 

 
「タマっ」
 

 
後ろの方から悠平の呼ぶ声が聞こえたことだけは、かろうじて分かった。
 

 
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