秘密
 

SIDE.門田悠平
 



 
雨宮先生にとってはただの遊びなんだ。
俺の気持ちだけを盗んだまま彼女は、別の決まった奴のもとへと嫁ぐ。
 

そうだ。
雨宮好美には婚約者がいる。
門田悠平と逢引のようなことを繰り返すのはいわゆる、マリッジブルーからだった。
 

 
「門田君、こっちよ」
 

「先生、おはよ」
 

「うん、おはよう」
 

 
雨宮好美は若くてとても柔らかい性格の女性だった。
24歳の若い女教師というものは沢山の生徒から好かれていた。
守ってやりたくなるほど小さな雨宮は来年の初夏、結婚が決まっている。
 

 
「先生、もう半年をきったな」
 

「そうね……この学校に勤めるのもあと少しだわ、寂しくなる」
 

「ああ」
 

 
会っては接吻、抱擁、接吻を繰り返すだけであった。
今、雨宮の腹には小さな命が宿っている。
それは悠平も知っている。
 

まだ全く目立つ様子のない腹に、小さな体の雨宮を抱き締めるたびに悠平は思う。
この人が自分の女ならば、どれほどいいのだろう。
 

 
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