電話越しの君へ
「綾瀬ー、やっぱり好きなの?」
一人の声に俺は飛び起きる。
「………うん」
その声に確信した。
綾瀬だ。
「やめなってあんな怖いかんじの男っ」
「綾瀬にはもっと紳士で素敵な人のが合ってるよー!!」
「…それに今、ギクシャクしてんでしょ?」
どうやら今あいつらは綾瀬の好きな奴の話をしているらしい。
この前から盗み聞きばっかだな、と思ったが耳を塞ごうとは思わなかった。
「うん…。でもさ、私バカだからあいつが1番かっこよく見えちゃうんだ。好きな人がいても、それでもいい。
私、杉本が好き…」
苦しげな声が風に運ばれて俺に届いたとき、真冬にもかかわらず俺の頬は真っ赤になった。