電話越しの君へ
綾瀬のことになると、本能が疼くんだよな。
反射的に飛び出しながら、俺は思った。
まるで、前世からの記憶みたいに身体に染み込んでる。綾瀬を庇おうとしてる。
綾瀬が好きだ。
綾瀬と一緒にいたい。
これもきっと、本能で、必然。
―…ドンっ
鈍い音と遅れてくる痛み。
「……え…?」
か細い綾瀬の声。
そして、俺を振り向く瞳。
「……ってぇ」
トンっ…とボールが転がっていく様子が目の端に映った。
どこからか聞こえる「すみませーん」という間延びした声。
「…っ、あぶねーだろーが!!!!」
サッカー部目掛けて
怒りのまま俺は叫んだ。