【短】同窓会―episode 1―
「あ、水城先生?」
居酒屋を出てしばらく歩いていると、聞き覚えのある声がして振り返った。
「…嶋津先生。」
私服の嶋津先生は、学校で見るよりずっと綺麗だった。
「何してるんですか、そんな荷物持って。」
そう言って荷物を持とうとすると、
「あ…これは、駄目!」
そう言って思い切り手をひいたので、袋が手から離れ、中身が飛び出した。
「あー…やっちゃった…」
嶋津先生は顔を真っ赤にして俯いている。
袋から出てきたのは、沢山のチョコレート。
「こんないっぱい、食べるんですか?」
俺は驚いて嶋津先生を見た。
確かこの人は、甘い物が駄目だったはず…。
「……これは、私のじゃなくて、水城先生にあげようと思ったんです…。
なんか、最近元気なかったから…。」
いつもと違ってボソボソと喋る嶋津先生。
俺のために、こんなに沢山?
「こんなに食べれませんよ。」
「わ、わかってますよ!
間違えちゃったんですよ!」
顔が真っ赤なまんま、ムキになって言い返す嶋津先生。
…なんだ、意外とうっかり者?
俺はこらえきれず笑った。