【短】同窓会―episode 1―
未葵。
お前は、ずっと、俺を見てくれていたんだな……。
俺と同じように、いいや、俺よりずっと苦しんでいたんだな…。
「泣くなよ、未葵…
泣かないで……。」
溢れ出しそうな涙をこらえて、小さな声で言った。
わいわいした居酒屋に、俺の声は書き消されてしまう。
「…ごめん蒼ちゃん。
死ぬ前は、絶対泣かなかったのに。
私、弱虫だね……。」
未葵はそう言って笑った。
泣き虫な未葵。
強がりな未葵。
病気に立ち向かった未葵。
いつも笑顔だった未葵…。
全て、あの頃のまま、なにも変わらない、未葵…。
「………未葵、好きだった。
大好きだった。」
過去形にしたのは、
忘れる覚悟をしたから。
未葵を、思い出にする、覚悟。
涙が止めどなく流れる。
涙ではっきり未葵の顔は見えなかったけど、
ぼんやりと見えた未葵の顔は笑顔。
大好きだった、未葵の楽しそうな笑顔だった。
「私も、蒼ちゃんが、
大好きだったよ。」
眩い光が、未葵を包み、俺は目を伏せた。
俺が目を開けた時にはもう、未葵はいなかった。