空白の時間＝友情＞愛情

因果

７月２日(上海)－。

広沢寛治はいらだっていた。

数年前から外資系コンサルの台頭で、日中合弁ビジネスのプロジェクトが思い通り運ばなくなっていたからだ。



「おい、あのなんとかいう生意気な若造…あいつは何という名前だ？」

秘書が答えた。

「中村健吾氏です」

「我が社の邪魔をする者は消すぞ！」

「社長、あまり手荒なことは…」

「うるさい!!陳を呼べ!!」



２時間後、広沢寛治は５０階にある社長室から眼下に広がる上海の街を眺めていた。



ノックの音に振り返ると、陳が姿を現した。

「まあ、かけてくれ」

陳は無言でソファーに腰をかけた。

「また、お前の力を借りねばならん。テーブルのアタッシュケースを開けろ！ターゲットの名前と金を確認しろ!!」

景色を眺めながら、広沢寛治は続けた。

「それで足りるな。やり方はお前に任せる」

陳は広沢寛治の後姿に一礼し、アタッシュケースを抱えて部屋を出た－。