クリスタルライン
立ち上がり、階段を降りて、ゆっくりと波が打ち寄せる方向へ進んで行く。
波打ち際で立ち止まり、風を感じた。
リョウのいないこの世界は灰色だった。
私は、誰がなんて言おうと、今日この瞬間まで精一杯生きてきた。
楽になりたい……
もう苦しまなくてもいいよね。
待っててね、リョウ。
今すぐに、あなたのもとへ行くから。
階段のところに、鞄も靴も置いてきた。
きっと誰かがそれを見つけてくれて、何かあったのだと思ってくれる。
お姉ちゃん、お母さん、お父さん。
先に逝ってごめんね。
今まで、沢山迷惑かけてごめんなさい。
そして、今までありがとう。
瞳を閉じ、一歩ずつ進んでいく。
水が足に当たった瞬間、冷たいと思った。
だけど今は、その冷たささえ惜しくない。
だって、死んじゃったらこの感覚もなくなっちゃうんだもんね。