クリスタルライン
時計を見ると、針はたしかに夜中の12時近くをさしていた。
……全く、何をやっているんだか。
私は重たい足取りで立ち上がり、コンポの電源を落とした。
「もっと早く起こしてくれればよかったのにぃ」
何故かイライラして、お姉ちゃんにあたってしまう。
いつものこと。
「バカね。姉ちゃんも忙しいのよ」
強く言う姉を、横目で睨んだ。
「言ったでしょ?母さんたちがいない間は、お互いしっかりして頑張ろうって。杏里、もっとしっかりしなさい」
姉はそう言い残し、部屋を出て行った。
シーンと静まり返った部屋の中央に、私は呆然と立ち尽くす。
考えるのは、さっき見た夢のこと。
リョウが久しぶりに出てきてくれた。
もっと、見ていたかった。
「リョウ……」
誰も答えてくれないのは分かってるけど、一人彼の名前を呟いた。
窓へと向い、カーテンの隙間から、斜め前の一軒家を見つめる。
昔リョウが住んでいた家だ。
今は誰も住んでいないので、部屋の中は真っ暗……
胸に切なさがよぎった。