オリオンの砂時計
★OTONA。★


ずっと幼い頃、早く大人になりたいと願った。
子供の頃、必死の声は周りにいる大人に一笑されて、相手にされなかった。

二十歳の誕生日。
それまでで初めて、独りで迎えた。
二十歳になって。
アルコールを飲んで。
むせながらタバコを吸って……

いわゆる大人の境界線を越えても、私は何も変わってなかった。
子供の頃、大人のくせに……とのろった事は数え切れないけれど、大人だからって、何にも変わらないんだって実感した。
背負う義務や手続きが多少増えてややこしくなるくらいの、ちがいしかなかった。

年下の子を馬鹿にしない。
年上の人を尊敬もしない。
生きた年数で、肩書きで、財産で、全てが決まるわけじゃない。

二十歳を超えてから、倫理に反したり、法をおかしたり、人の道に外れると言われるようなことをたくさんしてきてる。
これからもきっとするだろうけど。

子供の頃、子供を不幸にするようなことだけは絶対しない大人になろうと決めたのに、数人の子供たちを不幸にしてる。

毎日が後悔の連続だけど、人を傷つけたり、傷ついたりしながらでも、「いいね」と言われる笑顔だけは忘れないでいよう。


★クレプトマニア。★

雑貨屋さんをブラブラしてるうちに、何かしたくなった。

買いたいんじゃない。スリルを楽しみたい訳でもない。
暇つぶし。

店の外側、防犯カメラと店員から死角になる位置をゆっくり探すと、ひとつひとつ、小さな品物を手のひらにおさめていく。

誰も見ていないことを見回さずに確認し、何ということもなく、バッグの隙間に落とし入れる。
何もなかったかのように。
ただ雑貨を見ているだけのように。

欲しい訳でもない。

クレプトマニア…盗癖。
日に日にエスカレートしていく。

繰り返す毎日。
いつか捕まって警察に突き出されるかもしれないけれど、その場面は想像できない。

空いた大きな穴、埋めるために。


< 6 / 87 >

この作品をシェア

pagetop