中心のアイツ
立花さんにしつこく訊いていたら、少しだけ話してくれた。

「私明星高校にいた時に、転校して来た男の子を好きになってね」

ボソボソと呟くように話すので、聞き逃さないようにしっかり聴いた。

「その男の子は、同じクラスの別段可愛いわけじゃなくて、平凡な子と、仲が良かったの。その時私は嫉妬で狂ってて、自分勝手だったから本当は綺麗だったのかもしれないけれど。その子が、気に入らなくて苛めてたの」

 内容はもらった資料道理だったけど、何か後悔しているように感じた。

「その子が、羨ましくて、たくさんいろいろな事をやってしまったわ。私は彼女の友達を、傷つけて、しまった」

「えっ……?」

そんなの、書いてなった。いや、〝隠蔽されて〟いるのかな……

「その時の、彼女の顔が忘れられなくて、あんなに笑顔だった子があんな顔をするなんて思ってもみなかった……。そして私は父のお金を使って、退学処分をなかったことにしたの。でも――――――」

グッとそこで彼女は言葉を切った。私は彼女が話すのを待った。

「でも、彼女はそれを許さなかった。私の精神をどん底まで崩壊させた。殺してやろうかと思った。止められた。私は、自分の無力さを知ったわ」

殺してやろうかと思った、には驚いた。ゾクッとした。彼女の憎悪に。でも、そんな事をしたら殺人未遂で逮捕されるのに――――――

「手を回してくれたから。どん底に落ちても、一からやり直せるチャンスをくれた。一度は無駄にしてしまったけれど、私はもう一度やり直すわ」

そう言った後の立花さんは、清々しい顔をしていた。
 そんな事をされても許せれる見た事もないその女の子に、尊敬の念を抱いた。

それに答えようとする彼女にも。

「友達に、ならない?」

そう言った私に驚いたようにこっちを振り向いた。

「私と一からやり直しましょ?」

そういうと、フッと花開くように笑った。

「やっぱり、似てるわ。貴女と彼女」

そう言って、よろしくと握手をした。
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