ビター・キャラメル
「待って待って!」
「なんですか、片付けお願いしたじゃないですか」
「ひとりは危ないっていっつも言ってるでしょう!」
あたしに追い付いた彼は怒ったように頭を小突いた。
痛い。叩かなくてもいいじゃない。
彼はいつもあたしを送っていく。よくわからないけど心配してくれているらしい。
確かに今は10時はすぎ。そして人通りも車も少ない。でも決して危なくはないと思うんだけど。
それに、こんな廃れた女子高生誰が襲うか。
あたしが男ならお断りする。
まあ悪い気はしないから黙って送られるけど。
「ねぇ、でも最近あなたの方が不審者な気がしないでもないんですけど」
来たときもそうだけど、かなり大きなサングラスに帰りはマスクまで。今日はまたスーツだから余計に怖さを感じる。
日に日に変装(?)が激しくなっている気がするなあ。
「いやーこれにはいろいろあってねー」
あは、とわざとらしく笑う彼。
「ふぅん」
真っ暗な闇の中と、顔を覆うもので、彼の表情はまったく読み取れない。