ビター・キャラメル
大人の事情ってやつ?
彼については本当に何も知らないし、知るのもなんとなく怖い。
いや、だってヤバい方の人間だって言われてもまったく不思議な感じではないし。
「まあきっと、そのうちわかるよ」
「…よくわかりませんがそういうことにしておきます」
家までの徒歩15分の道をふたりで歩く。
だんだんと寒くなってきた今の季節、夜ともなれば手と耳とハイソックスから出た膝が凍りそうなほどつめたい。
タイツはいてくればよかった。
「あ、おねーさん、携帯期待しててね!」
彼が思い出したようにそう言って、楽しそうに鼻歌をうたいだす。
真っ暗闇の中で、街灯が先に行った後ろ姿の彼を照らす。
後ろ姿でもやっぱりサマになるなあ。
…って、そうじゃなくて!
「それ冗談じゃないんですか!?」
信じられない。確かに携帯はほしいけど!