ビター・キャラメル
「おねーさんの携帯持ってないっていうのが事実なら」
「…それは本当ですけど」
「じゃあやっぱり買ってくるよ」
携帯を買ってあげる、なんてやっぱりヤバい世界の人間で、あたしはそのうち売り飛ばされるのだろうか。
うーん、どっちにしても金持ちであることには変わりないらしい。
少なくとも、あたしがおねーさんと呼ばれるのは間違ってる。
「でも!」
「でも?」
「俺以外の男は登録しちゃだめだからね!」
「……」
サングラスにマスクの不審者にそんな口調でそんなこと言われるとなんだかおかしい。
「返事は!?」
「あ、はい」
ちなみに言うと、登録の仕方はおろか、電話のかけ方もわからないんだけど。
きっとバカにされるだけだから、もし買ってきてもらえた時にはがんばって取扱説明書を読むことにしよう。