ビター・キャラメル
Dolce
「まったく、ついてないにもほどがあるよ」
ひとりごちてから、はぁとため息をついてさっき拭いたばかりのテーブルを拭き直す。
コーヒー溢して制服染みだらけ、なんて。泣きたい気分だった。
まあ、これがお客さまの帰ったあとのテーブルなだけ、まだマシか。
…そういえば制服の予備ってもらってないけどどうしたらいいんだろう。
「がんばれー」
聞こえてきた声の方向、入り口に目を向ければ、ヒラヒラと手を振って笑いながら、サングラスにスーツを着た全身真っ黒な彼が店の中に入ってきた。
見慣れた姿だが毎度のことながら不審者さながらの姿で現れる彼には驚かされる。
彼は、この店の常連さんだ。
常連と言っても名前は知らないけど。
今の格好は完全に不審者だけどそのサングラスとマスクをはずせばイケメンの常連客。