手の中の蝶々
自分で、ドSであると自慢気に言う先生の気が知れない。
尤、先生がMだなんて思ってるんじゃない。
あれは苦し紛れの反論で。
嫌っていうほど、ドSの部分を見せ付けられてきた。
言わずもがな、それくらい知っている。
只、私はその先生が怖い。
逆らえない、抗えない。
支配され、思うままに。
それは、自分がそう望んでいるから?
「…ってそんなの私がドMみたいじゃない!!」
頭の中に浮かんだ疑問を、声に出してねじ伏せた
……つもりだった。
『夂葉さんはドMだよ?』
私の言葉を聞き流さなかった先生は、丁寧に答案してくれる。
…でも、そんな答案反対だ!
「私と先生をさも相性が良いように言わないでよ…!」
『なんで?良いに決まってるでしょ?』
より、私に影を重ねる先生。
見下ろす先生は、生き生きしていて。
『こうやって僕に見下されるの、嫌いじゃないでしょ?』
顔と顔の距離を詰める先生と、私の距離は、もう既に誠実な先生と生徒のセーフティゾーンを侵している。