手の中の蝶々


昨日の夜は、なかなか寝付けなかった。


先生の言葉が頭にこびり付いて。


朝起きて大人しくエプロンを来てる自分が普通になっていて、この生活に順応している事に気付いた。


学校について先生と生徒になっても、私達の関係は続いている。

『じゃあこれでショートを終わります』

出席簿を閉じて教室から出ていこうとする先生を、呼び止めるあの声。


「先生っ」

片手にはアイロンで。


でも、今日だって私が寝癖は直したから先生の髪の毛は整っている。


なのに波内さんはしゃがんで下さいと促す。


私は見ていたくなくて、机に突っ伏す。


イライライラ、


まただ。



しかしそのイライラは、直ぐに消え失せる事となる。


『ありがとう、でも大丈夫だよ。僕には毎朝お世話してくれる人がいるから』


耳に入ってきたのは、きっと自分をさす事で。

私は慌てて顔を上げる。

それと同時に目で捉えたのは先生の意地悪い笑顔で。

『へ?先生同居してるんですか…?てかそれってお嫁さん…!?』

しかしその顔は一瞬で先生らしいまともな顔に戻る。


『お嫁さん…………かもしれないね』


口に人差し指を立てて微笑する先生と一瞬目があって、私は頭を机にぶつけるんじゃないかと言うくらいの勢いで再び机に伏せた。


でも今の心臓と先程の心臓では、違うものみたいに激しく動き回って。






赤い顔が、伏せていて周りから見えなくて良かった。




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