手の中の蝶々


それにしても、学習が無い。


私がいる場所は、


またもやあの公園。
先生に拾われた、あの公園。


同じようにベンチに座って、暫く経った。



…そんなの、まるで―――






『僕に見つけてもらいたいの?』

背後から聞こえた声に体が反応する。


…そう、まるで先生に見つけてもらいたいみたいだ。




「…来ないでっていったでしょ」

なのに、口から飛び足すのはこんな風な意地で塗り固められた言葉だけで。


『僕が来たかったんだ』


先生の声はそんな私にも優しい。


「…私が嫌なんだってば」


心の中でどれだけ素直になれたって、現実ではそう簡単に思ってる事を言うなんて出来ない。


それでも、きっかけがあれば、
想いをぶつけられれば、


『だって、僕は夂葉さんに家に帰って来て貰いたいからね』


「……っ」


逆らう意地は、もろとも消えてしまうかもしれない。



先生は私が言って欲しい事を知っていて、私の望みを、私の心を分かっていて。

何処までも私の扱いが上手いんだ。



こんな事言われたら、完璧に私の負け。

私の意地は先生の根気には勝てない。




本当は分かってるんだ。
先生が言うお姉ちゃんに会えっていう意味も、先生が私を邪魔だなんて思ってない事だって。


素直になる方法だって、知ってる。





「…ごめんなさい」




口にしてみればそれは心地よく響いて、なんて事無く全てを解決してしまうんだ。



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