手の中の蝶々
とまぁ冗談はさて置き。
『海んとこ行くんだったら乗ってく?』
託さんからのお誘い。
走りすぎて横腹は痛いし、足だって疲れたし。
本音を言えば乗せてもらいたい。
だけど……
「自分で…行きます」
そうじゃないと意味が無いんだ。
自分の足で、進まなきゃいけないんだ。
『そ?分かった。…ちーちゃん、頑張ってね』
意味深な微笑み。
しかしその意味を追及する間も無く、車は発進してしまって。
「待っ…!」
私の声は排気ガスと供に空気に溶け、託さんには届かない。
結局謎だらけの託さん。
しかし今はそれを仕方ないと諦めて、早く先生の元へ。
自分で行くって決めたんだ。
走って行く、そう決めたから。
苦しくなったって走るんだ。
「よしっ」
ぐっと拳を握って、再び走りだした。