手の中の蝶々
「ねぇ、なんで?」
私は再度問うのに先生は何も答えようとしない。
「ねぇったら」
『…笑わない?』
それでもしつこくチャレンジしたら先生も諦めたようで。
大きく息を吸い込むのが聞こえて。
『夂葉さんのこと考えててそれどころじゃなかった』
早口にそう、告げた。
「へ…?」
『本当情けないよ。今の今までうじうじ悩んでさ。君に先越されちゃったよ』
つまり、何も手がつかないくらい、私の事で頭がいっぱいだったって事…。
そんなに、おもってくれていたなんて、知らなかった。
「先生、大好き…」
『我慢してるんだから可愛い事言わないでよ』
「何が…!」
私が思わず言ってしまった言葉に先生はわざとらしくため息をついた。
そして……
『俺が弱気なのはここまでだからな?』
耳にかかった息に、嫌な予感がした。