手の中の蝶々



只、捕まっただけでは終わらない。


私達の問題は、


―――ピンポンーン!ピンポーン!


まだドアの向こうに残ってる。



激しくなるチャイムの音を聞いて、私達は慌てて体を離す。
このタイミングで、急かすようなチャイムの鳴らし方…。

おそらく、鳴らしてるのは、お姉ちゃん。

それぐらいしか、思いつかない。


「出なくて……」

『そんなわけにはいかないよ』

先生は私の言葉には乗らず、玄関に向かう。

…ここで、二人が対面したら、何を話すのだろう。
騒ぎになってしまうんじゃないだろうか。


私の不安はどんどん大きくなり、玄関に向かう足取りは重い。


それに比べて、先生はまるで怯える様子無く、堂々としていて。

背中がなんだか頼もしくて。
抱きつきたい衝動に駆られる。

…まさかそんな事はしないけど。

――ピンポンピンポーン!!


よっぽと焦っているのが伝わる程、何度も何度も鳴り響くチャイム。


そして、遂にそれが止まったのは、先生がドアの鍵を捻ってからだった。


今、ドアが開かれて。
いよいよドアの向こうに立つ人物の姿が見えた。



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