手の中の蝶々


それは、予想通りお姉ちゃんで。

…嫌な緊張感が漂う。


しかし、お姉ちゃんの言葉は、私が予想したようなものでは無くて。
『…急かしてごめんなさい。心配で…。でも夂葉の顔見たら安心したわ』


それどころか、それはとても優しく、私の事を考えていて、押しつけの決して無い、柔軟な考えなのだった。


『初めまして。夂葉の姉です。貴男が、夂葉の面倒を見てくださってたんですよね』


友好的に会話を交わすお姉ちゃんから、先生に対しての敵意はまるで感じなくて。

私は違う意味でドキドキしてしまうのだった。



…そして次の瞬間、それの百万倍ドキドキしてしまう事に。


『こちらこそご挨拶に向かわず申し訳ないです。私、夂葉さんの担任で―――』









『只今恋人になったばかりの者です』











恋人…………


って…!!

『先生何言って…!』


馬鹿?馬鹿?
何考えてんの!!!!
いきなりは流石に無理あるってば!
だって先生と生徒だよ!!お姉ちゃんが何て言うか…!


『…へ?』


ほら!お姉ちゃん目が点になってるじゃん!!


『え、えっと…先生…?で、恋人…?』

『はい。間違いなく』

にこやかな先生は、危機感ゼロで。
今自分が何をやらかしたのか、全然分かってない。
…いや、分かってるんだけど、大丈夫だという自信があるような表情だ。


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