手の中の蝶々
とらわれの蝶々
お姉ちゃんが帰った今、この空間には先生と私2人きりで。
「……」
ついこの間まで暮らしていたこの部屋。
勿論その時だって2人きりだった。
『中入ろっか』
状況が変わっただけでこうも緊張するものなのか。
先生の、私を導く手に、ドキドキする。
「うん……」
ようやく出た声は自分の声とは思えないくらい、なんていうか……乙女で。
しかしその雰囲気をぶち壊したのが、
――ピンポーン!
再び軽快に響いたチャイム音。
『「??」』
まさかお姉ちゃんじゃないだろうし、宅急便か何かかな?
私が立ち止まっていると、横を通り過ぎて、ドアを開いたのは先生。
そして、その先に立っているのは……
『酒付き合ってくれよ』
姿は先生に隠れて見えないものの、
この声は………
『なっなんでちーちゃんいんの!?帰ったんじゃないの!?』
私をちーちゃんと呼ぶ、金髪の持ち主、そんなの1人しかいない。
「託さんこそ…。私と知り合いなの先生にばれていいんですか?もう手遅れですけど」
『……』
それはまさしくたんぽぽの君、託さんだが。
確か、俺と会った事は海には内緒にしておいてくれ、とかなんとか言ってたはず。