手の中の蝶々
教壇の段差を飛び越えた私達に、怖いものなんてきっとない。
『夂葉さん宿題やってないでしょ!やってからじゃないとテレビ禁止!』
「あー!消さないでよ馬鹿馬鹿!」
家でだって教師の顔をちらつかせる先生も
『また託とあってたでしょ!』
「たまたまスーパーの帰りに…」
『夂葉さんの浮気者』
意外にやきもちやきで、ことあるごとにいじける先生も
『エプロン姿の夂葉さんは世界一!』
「……はー…」
ため息が漏れてしまう程のエプロン溺愛ぶりも
全部愛しい先生で。
『またまたまた託と会ったらしいね』
でも、先生は私を惑わすのが上手い。
『そんな子はおしおきだね』
「っいた…」
『痛みも僕からなら陶酔感に変わるでしょう?』
でも一定の線以上越えてこない先生、だから私はキスも未経験のままで。
大人になりたい。
そう思えば思う程、子供じみた願いだと、自己嫌悪になって。
それでも空回った感情は、溢れてしまうのだった。