手の中の蝶々


「先生キスして」

『は…?』

子供なんかじゃ、ない。


「誰も見てないからいいじゃない」


2人だけの秘密。
壁を打ち壊して。
2人で罪をかぶればいい。
2人なら怖くない。


『…っ。ちょっ、夂葉さん』


ベッドまで追い詰めて、肩を思いっきり押せば、仰向けに倒れてしまう先生。


「好きなの」

『……!!』

先生の胸に手をつく私から、顔を背ける先生。
何かを必死に耐えているように見えて。


そして、先生の髪に触れた瞬間、私の視界はまわり、気付けば上に先生がいた。

『俺は…!俺だって夂葉さんを抱き締めたいしキスしたいし触りたいよ。でも、きっと止まらなくなる。それじゃ駄目なんだ大切なんだ。壊したくない!』


いつもの口調ではないのに、俺、と言う先生。
きっとこれは正真正銘本音。

「ごめ…、ごめ…なさ……」


あまりの迫力と、自分の行動の浅はかさに、涙が出る。

こんなに想ってくれる人の意志を無視するなんてそんなこと出来ないに決まってる。


「顔…洗ってくる」

涙でぐしゃぐしゃな顔を隠して、ベッドから立ち上がろうとする。

「っきゃ!!」

そしたら、布団に足がもつれてしまって顔から床にまっ逆さま。

『夂葉さん!』




「(いったー…)」

って口が動かない………………






「ってうわーーー!!!!!」






アクシデント発生。







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