手の中の蝶々
『卒業祝いに新しいエプロン買ってきたよ!』
こんな所は相変わらずなのに、
不意に近づいた距離が、いつもより近くて。
『卒業おめでとう』
「い…、今っ!!」
『だって解禁だもん』
唇をつついて笑う先生は、私にとったらもう先生では無くて。
『やっと夂葉さんに触れる…』
「っ…待って…!」
『無理に決まってるでしょ馬ー鹿』
2人の本当の同居生活は、今日の今から始まった。
『こんにちはー!ちーちゃんの卒業祝いはこれ!』
チャイムも鳴らさずに絶妙なタイミングで入ってきたのは、勿論託さん。
そして高く振り上げるその手には、
真っピンクの紐パンで。
「……着ませんよ馬鹿!!」
『え〜、いい処分先が見つかったと思ったのに…。恵美に怒られる…』
「浮気の証拠隠滅に私を使わないで下さい…!」
ブーブー言って託さんは出ていって、再び先生とさっきの空気になってしまう。
『俺はあれ着てみて欲しいな』
「へ…!?」
『あはは、冗談』
笑う先生。
僕だって俺だって先生は先生。
私を求めてくれる人物。
気付けば頭の中は先生だらけで。
教壇に立つ先生にクラクラしてた。
でも今からは、間違いなく恋人以外には当て嵌まらない存在。