手の中の蝶々
んなもん……
「家、ない」
『はぁ?そんなはずないでしょう?』
「ないんだってば」
『嘘言っても駄目ですよ?帰りなさい』
「だから本当にないんだってば!」
何回も言わせないでよ
「ぅ"っー…!」
『へ?泣…っ!』
涙がボロボロ流れる。
「…っい、家なんて……ないっっ」
『……っ』
先生困ってるかな…
いきなり泣かれちゃね。
『ごめん』
「……へ?」
なんか、温かい…?
もしかしなくても……抱きしめられてる…。
何やってんの先生。
『事情は分かりませんが…、言わせてしまってすみません。
…家がないならそうですね……、僕の家近いんで来ます?』
僕の家近いんで来ます?
「……………」
家来ます?
「……無理に決まってるじゃないですか!馬鹿ですか!今、夜の11時ですよ?んな時間に女生徒部屋に入れるとか絶対ヤバ……」
抱きしめられている力は思いの外強くて、そのままの状態で抗議していた私だけど、より強く抱きしめられたせいで、先生の肩で口が押さえ付けられて喋れない。
耳元に違和感を感じると思ったら……
『僕のこと……男として見てるってことでいいですか?』
先生のこんな低温ボイス、聞いたことない。