手の中の蝶々


こんな普通の、眼鏡教師を……

「おっ、男としてなんて見てないし!」

『じゃあ家来ます?』

「行ってやろうじゃないの!」


何か起こるはずがない。
菊島先生だし。
もし先生が豹変したら訴えてやる。


『さ、雨に濡れるので早く』

解かれた腕。

再び空気に触れた体は一瞬で冷たくなってしまう。


『ほら、早く』

差し伸べられた手をとって、私は立ち上がった。



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