手の中の蝶々


――ドン!!!


『いてて……』

「せ、先生なんて!すす好きなわけないじゃん!!」


私は先生を思い切り突き飛ばして、それだけを言い残し、猛ダッシュで逃げ出した。


『…"好き"なんて一度も言ってないのにな』

だから、ずれた眼鏡を直しながら微笑を浮かべる先生の事なんて目に入るわけなかった。




『あ、桜木さん。授業始まるよー………、ってどうしたの?真っ赤だよ?』

「へ?あ…!あぁ!き、今日暑いよね…あはっあははー…!」

『……?』


教室に帰ってきたは良いけど、火照りが、おさまらない。

違う事を考えて落ち着こうとしても、出てくるのは先生ばかりで、余計熱くなる。



私は先生が嫌いで――…!
でも、皆よってたかってヤキモチヤキモチって…。


もう嫌だ……

プシュー………


『ひっ!だ、誰か!桜木さんが湯気だしたまま動かなくなっちゃった!!!』



……もう、駄目だ。




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