手の中の蝶々
『朝の事だけど――』
"朝"と聞いてドキンと胸が跳ねる。
『夂葉さんが倒れたのって、あれが原因でしょ?』
「なんの事……」
『とぼけないで。僕、考えたんだけどね、夂葉さんは僕の事が嫌いだって言ったよね?』
「それが何…?私は本当に…」
近い先生との距離に、先生の目を見ることが出来ない。
ギシッ、と軋むベッドが、私の頭をより侵食する。
『でもね、それじゃ可笑しいんだ。夂葉さんが本当に僕の事が嫌いなんだったら、答えが出てるはず。悩む事は何もない。なのに君は考え過ぎて破裂しちゃったでしょ?って事は君もそれが本当の答えじゃないって分かってるんじゃないの?』
「い、意味が分からない…!」
長い言葉を落ち着いて理解できる程私の心理状況は穏やかではない。
『あれ?分からないかな?
君が本当は僕の事嫌いなんじゃない――、寧ろ逆だ。って言いたいだけなんだけど。あ、でもね、嫌いってのも強ち間違いじゃないのかも』
「私に分かるように言ってよ!」
1人で先に進んで納得されたって着いていけない。
『言っていいの?』
しかし先生の顔を見て、嫌な予感がした。