明日も、キミに恋をする。
「お父さん、新聞おいてよ」

 


優が言うと、おじさんは素直に新聞をたたむ。


おばさんは俺がさっき渡した
お土産のカステラと紅茶を持ってやってくる。





「ねえ、あなた。優の彼氏イケメンでしょう?」


「……あいにく今日は眼鏡の調子が悪くて目が見えんな」


「だってお父さん、眼鏡おでこにかけたままだよ」




新聞を読むのに眼鏡を頭にかけていたおじさんは、優の指摘で慌てて眼鏡を戻す。



俺はちょっと笑いそうになる。




優のおじさん…ちょっと天然なんかもしれん。

俺は銭湯にパジャマを持ってやってきた優を思い出した。

優のそういう可愛いとこは、おじさん譲りなんかな。






「…それで、高橋くんは優のどこが好きなんだい?」

「あなた木下くんよ」

 


おばさんが小さな声でフォローしてるけど、ばっちり聞こえてる。




「お父さん、そんな恥ずかしいこと聞かなくていいから。大輔くんも困るじゃん」



優も赤くなりおじさんを睨んでるけど、

俺はそんな優に待ったをする。




「優、俺は大丈夫やで」

「でも大輔くん…」

「えっと、俺が優を好きになったキッカケは、優がすぐ赤くなるとこで……あと、控えめやのに実は周りをすごいよく観察してて、優しいとこです」





俺が言うと優が真っ赤になる。





「私…そんなに観察してる?」


「うん。教室でカーテン閉めないとみんなが黒板見にくいとか、一生懸命な日誌とか。俺、優が教えてくれたこととか、やったこと、ぜんぶ覚えてるもん」


「あ、あれは…そんな大したことじゃないよ」


「そういう謙虚なところも、好きやねん」





俺が微笑むと、優は真っ赤なまま、うつむいてしまう。


そんな俺と優のやりとりを、おばさんは手を頬にあてながら、まぁまぁと微笑ましく見ている。


おじさんは、大きく咳払いする。





「ごほんっ……そ、そうか。まぁ僕がいうのもなんだけど、優は本当に良い子だからな」


「はい」


「木下くんがまだ知らない良いところも、いっぱいあるんだぞ」


「え、それは俺ぜひ聞きたいです」


「お、お父さん…そういうの本当いらないから…!」




優がおじさんを止めるけど、おじさんは優の幼少期エピソードをたくさん、俺に自慢げに話してくれた。



俺はそれを笑いながら聞く。



おじさんが話してくれるのが、ほんまに嬉しかってん。





優はめっちゃ愛されて育ったんやな。

せやから、こんなに優しい子なんやな。




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