最後のメール nonfiction ホスト's love story
ハジメテノキミ
出会いは四年前、N市内にある僕の働く店。

純白の壁にキラキラと光が降り注ぐ、雪の世界の様な店内。

場違いな所に来てしまったという様に、一番角の席に遠い目をしながら、ちょこんと座る小さなキミ。

出会った時のキミは6つ年上の26歳だったね。
血液型はB型、背は147、服は胸元の開けた黒いセットアップ、
綺麗な茶色い、腰近くまで長く伸ばした巻いた髪。
今でも鮮明に覚えてる。

僕には他のお客様がいるのに、キミは違うホストを指名しているのに、何故かキミしか目に写らない僕。

大音量の中でも、不思議とキミの声は見つけてる。


「もうそろそろ、帰らせて頂きます。」

キミがそう話しているのが聞こえ、心臓が張り裂けそうな気持ちを隠して急いで席に向かった。

「帰るの?ってか指名してるみたいだけど、うちに来るの初めてだよね?」

「はい、、、こういう所は来ないのですが、マメに連絡を頂き、申し訳ないので一度だけ来て、もう連絡して頂かないようにしようと思って、、、」

やたらと綺麗な言葉と、美しいスタイル、愛らしい顔に釘付けになっていた僕は、何故かその言葉を聞き、ホッとした。
(あのホストを気に入って来てる訳じゃないんだ!良かった。)

「まじ?!律儀だね、、、ところでさ、俺、すごいキミと話したいんだ!頼むからもう少し居てよ」

今考えると、かなり強引だったが、初めてのこんな大きな胸の高鳴りを、そのまま抑えるのは、絶対に無理だと割り切った上での言動だった。

本来、ホストがどんな理由であれ、違うホスト指名のお客様の気を引こうとするのは、『爆弾』と呼ばれる御法度であり、クビならまだしも、下手を打てば百万単位の罰金を取られる。

出会ったその時、既に、五年のホストとしての生活を続けてきた僕は、その御法度を一度も犯した事はないし、それなのに何故か会って数分のキミなのに、特別な何かを感じたから迷いは無かった。

やはり今も運命なんだと思わされる。


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