贈る言葉
「行っちゃいましたねぇ」
「仕方ない……。我慢しない性格だから」
取り残された二人の少女。未だ落ち着きを見せぬ会場の中、パイプ椅子から離れようとしない。
「それより、どうする……?」
「そうですねぇ、このままここに居ても、めんどくさい事になりそうですし……」
「それやったら、この騒ぎに乗じて、三人でトンズラするか」
笑顔(というよりもやけくそに近い苦笑い)で現れた榊原。僅か小一時間の間に髪は乱れ、ずいぶん老けたご様子。茜と遥かも気が付きはしたが、小さく「あ……」とだけ声を漏らしただけで指摘できなかった。
「いいんですか? 担任教師なのですから詰問されるべきなのでは?」
「知るか。悪いんは、あのクソガキや。うちが責められる道理がわからんわ」
既に教頭あたりから責任問題を問われたのかもしれない。目尻が釣り上がり、苛立ちが見てとれる。
「なはは……。それはそれは……」
さすがの茜も乾いた笑しか出来ないくらいに。
「阿呆どもが来る前に、うちらも行くで。また騒がれたら堪らんわ」
取り残された三人の少女(笑)。未だ落ち着きを見せぬ会場の中、パイプ椅子からこっそりと離れ、三人は逃げ出した。
憎き元凶を追い求めて。
「待っとれよ、クソガキィ~……」