贈る言葉
雑談に華を咲かせていたのはいつの事か。辺りは静まり、合図を待つばかり。
《―― 卒業生入場》
「なぁ、なぜ俺がこんな―― 」
「黙って歩け」
おそらく高校生活最後であろう、哲哉と凛のやりとりも緩やかに進む行列に流される。
校舎から外の廊下へ進み、やる気のない拍手に迎えられ体育館へと入る三年生。
「てつや」
「ん?」
「代表、頑張ってね」
「やなこった。なぜこの俺がやらなくてはならんのだ。そこがそもそもの間違いなのだよ」
「もう。大好きだよ、てっちゃん」
「可愛くねぇぞ、アバズレ。 むしろぶりっ子が腹立つ」
「うっさい!」
「バボっ! 待てお前が振ったんじゃねぇか!」
「ひとの好意をけなすからだ」
「理不尽だ……」
レッドカーペットを項垂れたまま歩く柊 哲哉。17歳。幼馴染の時々理不尽な暴力と戦う少年。