美女と珍獣



事態が飲み込めなくてキョトンとしたまま、豪邸の中に連れられたあたし。


豪邸の中は、どこまでも豪華。

ほんと、着ぐるみさんってどういう人なんだろう……。



「あ、あの! お名前何て言うんですか?」


名前も聞いていないことに気付きそう尋ねると、着ぐるみさんはあたしを指さした。

……ん?

あたしが首を傾げていると、着ぐるみさんはぼそぼそと言った。


「その前に」


一瞬どういうことか分からなかったけど、すぐに気付いてあたしは言った。


「あたしは、如月 麻伽って言います!」

「アサカ……?」

「はい!」


うんうんと頷きながら、アサカ、アサカ、と着ぐるみさんは呟いていた。


この不自然なしゃべり方といい、着ぐるみといい……。

不思議なところが多すぎる。


スーツを着てるから多分社会人なんだろうけど、ただのリーマンにはありえないこの豪邸。




ソファを勧められたのでふかふかのそれに座りながらあたしが考えを張り巡らせていると、いきなりドアの開く音がして、あたしはびくっと体を縮こまらせた。


すぐさま聞こえてきたのは女の人の大きな声。



「トーマスっ!あんた一体何して…――」



その人は部屋に入るなり、行儀良くソファに座るあたしとくつろぎ中の着ぐるみさんを交互に見て顔を顰めた。



な、何?

もしかて彼女とか……!?


「あのっ……」


あらぬ誤解をされては困るとあたしが弁解しようとしたとき。




「あんた、遂に犯罪者になったの!?」






………へ?


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