美女と珍獣
深まる謎
……色々と大変だった一日が終わり、夜も更けてきた頃。
あたしは少し困っていた。
「珍獣さん、起きて下さい」
チュンチュンと平和な小鳥のさえずりを聞きながら、あたしは膝元の着ぐるみを着用した彼に向かってそう言った。
「んー、まだぁー」
こ、子供……?
全く起きる気配を見せない珍獣さんに、あたしはため息をもらした。
ずっと膝枕をしていた脚が、そろそろ痺れてきて痛い。
昨日の今日で、珍獣さんについてわかったことがある。
それは、彼がとてつもなくマイペースだということだ。
――昨日のこと。
ミユキさんが帰ったあとしばらくすると、お腹がすいたと言い出し、あたしに何かつくれないか聞いてきた。
簡単なものなら作れる、と告げればキッチンに立たされた。
あたしの作った本当に簡単な夕食を平らげると、今度は眠いと言い出し、あたしの膝の上で爆睡。
起こすことも出来ず、そのまま朝を迎えた次第。
一晩中同じ態勢のままの脚は、そろそろ限界を訴えている。
「ち、珍獣さん。ホントに起きて下さい……」
「……はっ!」
がばっ!
いきなり起き上がった珍獣さんを、あたしはびっくりして見つめた。
「ど、どうしたんですか」
「今日は、マリアンヌ……!」
「……はい?」
なんだかとても変わった名前を口にするなり彼はどこかへ走り去った。
あたしは呆然とするしかなかった。
マ、マリアンヌ……?