美女と珍獣


しばらくしてまた戻ってきた珍獣さんは、Tシャツにジーパンというラフな格好に着替えていた。

そしてしっかりと着ぐるみもかぶって。


でもさっきまでのソレとは違った。

さっきまでの着ぐるみも馴染みのない動物だったけど、また違う奇妙な動物のかぶりもの。


「珍獣さん、ソレ……」

あたしが着ぐるみを指さすと、誇らしげに珍獣さんは言った。


「いいでしょ、マリアンヌ」


「…………」


ソレのことだったのか、とあたしは妙に納得した。




それから、また簡単な食事をあたしが作って、珍獣さんはそれを食べていた。

器用にかぶりものと首の間にスプーンやらを入れ込んで、いとも簡単に食べてしまう。


それでもやっぱり不便そうに思えて。


昨日の夕食時、

「外したら良いんじゃないですか」

と告げてみたけど、

「いや。絶対、はずさない」

そう言ってまた器用にスプーンを口に運ぶ珍獣さんを見て首を傾げたのを覚えている。



正直どうして外さないのか気になったけど、まあ何か理由があるんだろうと結論づけ、あたしは気にしないことにした。



本来ならもっと色々と疑ってかかるべきなんだろうけど、この人は全く危機感を感じさせない雰囲気が出てる。


顔こそみえないものの、言葉とか仕草がなんとなく可愛いし。

背が高いけどすごい細いから、なんだか今にも倒れそうな感じがするし。



「おいしい。アサカの、ごはん」

「え?ありがとうございます」

「よしよしー」


また珍獣さんがあたしの頭を撫でた。

癖なのかな?


照れ隠しに、あたしは適当な話題を振った。



「そ、そういえば、珍獣さんって何の仕事してるんですか?」

「しごとー?」


そのとき。



――ドンッ


「「?」」


突然聞こえた大きな音に、あたしと珍獣さんは顔を見合わせた。


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