美女と珍獣
その一室は、あきらかに他とは違った。
「…………」
他の部屋は全部、キレイに手が加えられていて。
でもここだけは乱雑に本のような物が散らばり、埃まみれだった。
足下に落ちていた本を一冊手にとって見てみる。
「アルバム……?」
ペラペラとめくると、どこかの外国の風景みたいな町並みとかの写真がたくさん。
何枚か、綺麗な顔の外国人の家族の写真が混じっていた。
でも、おかしい。
人が映ってる全部の写真で、特定の少年だけが顔を隠されていた。
そこだけ針でひっかいたように、グシャグシャに。
「どうして……」
そう呟きながら、あたしはどんどんページをめくっていった。
――カサッ
突然した乾いた音に少しびっくりしながらも足下を見ると、どうやら落ちたらしい一枚の写真。
拾って見てみると、庭みたいな所で撮られた家族の幸せそうな写真。
やっぱり男の子だけ顔が隠されている。
何気なく裏を見ると、何か文字が刻まれていた。
For the last time
Lord knows who I am...
「英語……?」
暗がりの中、よく見えない英語を解読するのはあたしには難しいことだった。
読めたとしても、意味がわかるかは自身がないけど。
そのとき、玄関の方から物音がした。
――ガチャッ
「!」
珍獣さんが帰ってきたんだとわかると、あたしは慌てて写真とアルバムを元の所に戻してその部屋を出た。