美女と珍獣



「アサカー?」

あたしを呼ぶ声。


「に、二階です!」

あたしが答えると、こっちに歩いてくる足音。

あたしは階段の近くに駆け寄った。



「何、してたの?」

「ちょっと中見てみようかな…って思って。ダメでした?」

「ダメ、じゃない、けど」


言葉を濁す珍獣さんに、首を傾げて視線を送る。



「1番おくの、見た?」


そう言って珍獣さんが指さしたのは、あの部屋。


「……見てませんよ?」


「そう。なら、いい」



見てしまったことは言わなかった。

何だか見ちゃいけなかった気がするから。


でも、隠したことで嘘をついたという罪悪感が生まれた。

モヤモヤする。




「あ、そうだ。アサカの、へや、教える」


そう言って珍獣さんはあたしをひとつの部屋に案内してくれた。

あたしはびっくりして瞬きを繰り返す。


「え? お部屋なんてもらって良いんですか?」

「うん、あげる」

「何から何まで……、ほんとにありがとうございますっ」


あたしがお礼を言うと、満足げに珍獣さんが頷いて言った。


「かいぬしの、ぎむ」

「へ……?」



今、飼い主の義務って言った?


ほんとにペット感覚で見られてるんだ、とちょっと項垂れるあたしを、珍獣さんは不思議そうに見ていた。



< 20 / 51 >

この作品をシェア

pagetop