美女と珍獣
「アサカー?」
あたしを呼ぶ声。
「に、二階です!」
あたしが答えると、こっちに歩いてくる足音。
あたしは階段の近くに駆け寄った。
「何、してたの?」
「ちょっと中見てみようかな…って思って。ダメでした?」
「ダメ、じゃない、けど」
言葉を濁す珍獣さんに、首を傾げて視線を送る。
「1番おくの、見た?」
そう言って珍獣さんが指さしたのは、あの部屋。
「……見てませんよ?」
「そう。なら、いい」
見てしまったことは言わなかった。
何だか見ちゃいけなかった気がするから。
でも、隠したことで嘘をついたという罪悪感が生まれた。
モヤモヤする。
「あ、そうだ。アサカの、へや、教える」
そう言って珍獣さんはあたしをひとつの部屋に案内してくれた。
あたしはびっくりして瞬きを繰り返す。
「え? お部屋なんてもらって良いんですか?」
「うん、あげる」
「何から何まで……、ほんとにありがとうございますっ」
あたしがお礼を言うと、満足げに珍獣さんが頷いて言った。
「かいぬしの、ぎむ」
「へ……?」
今、飼い主の義務って言った?
ほんとにペット感覚で見られてるんだ、とちょっと項垂れるあたしを、珍獣さんは不思議そうに見ていた。