美女と珍獣
しばらく当たり障りのない話をしていると、
急に改まったような声色でミユキさんは言った。
『…ねえ、麻伽ちゃん』
「…?はい」
『トーマスの家で、何か変わったものとか見つけた…?』
「………」
返答に困った。
ミユキさんが言ってるのは、あの部屋のことだろう。
あたしは一息ついてから答えた。
「見ました、ちょっとだけ」
ミユキさんは、ふっと笑いを零すと、諭すかのようにあたしに言った。
『わかったわ。
ただ、そのことはまだトーマスには言わない方が良いと思うの』
「そのつもりです…。
えっと、ミユキさんは何か知ってるんですか?」
『ええ。でも私からは教えられない』
「はい、わかってます」
やっぱり、珍獣さんは何かあるんだ……。
そう思いながらミユキさんの話を聞いていた。
『トーマスはね。麻伽ちゃんのこと、とても気に入ってると思うの』
「え?」
『あの人、気に入った人としか喋らないのよ』
「気に入った人としか……?」
珍獣さんは、初めて会った時からあたしと喋ってくれたけど……。
何かの間違いじゃないかな。
『私にはわかるわ。
トーマスのことよろしくね』
ミユキさんは笑いながらそう言った。
「……、はい……」
そう答えたものの、あたしは大分頭が混乱していた。
気に入ってる?
珍獣さんがあたしを?
何で……??