美女と珍獣

***


「アサカ、俺、何かした?」

「もう良いです忘れて下さいお願いします……」


心配そうな仕草で尋ねてくる珍獣さんに、あたしは顔を上げられないままそう答えた。


珍獣さんを横目でチラリと見ると、かなり困った様子。



わかってる、珍獣さんは全然悪くないの。

悪いのは廊下にあんな物落としたあたしなの…!


でもでも!


当分、立ち直れる気がしない……。



あたしが机につっぷしてショックに打ち拉がれていると、玄関先から音がした。



―ピンポーン

ガチャッ



「………」


何、今の。

チャイム押してすぐに開けたらチャイムの意味無いじゃない。


ていうか鍵もかけてないの、この家は。



―ガチャ


「こんにちは麻伽ちゃん、トーマス!

……って、どうしたのよ?」


断りもなくリビングに入ってきたのは、ミユキさん。

どんよりとするあたしと、おろおろする珍獣さんを交互に見つめて、顔を顰めていた。



「ミユキさぁん……」

あたしが顔を上げてミユキさんを見つめると、さらにびっくりした顔をされた。


「と、トーマス!
あんた麻伽ちゃんに何かしたの…!?」

「えっ、おれ……」


「ち、違うんです…!」

「?」


ミユキさんは状況が読めないみたいで、首を傾げていた。


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