美女と珍獣
「あらまー、そうだったのね」
別室でミユキさんに先ほどの出来事を話すと、眉根を下げて頷いてくれた。
「気にしなくて良いのよ、麻伽ちゃん。
それにしてもデリカシーの無い奴でごめんなさいねぇ。
悪気はないと思うから、許してあげて」
「はい……」
あたしはまだ青い顔のまま頷いた。
しばらくすると、おずおずと部屋の中に珍獣さんが入ってきた。
「アサカ、ごめん。おれ……」
「良いんですっ!
あたしの不注意ですから気にしないで下さいっ」
あたしが笑顔でそう言うと、珍獣さんはどことなく嬉しそうに駆け寄ってきた。
「ふふ…っ」
ミユキさんの笑い声が聞こえる。
――トーマスはね。麻伽ちゃんのこと、とても気に入ってると思うの。
電話のときの、ミユキさんの言葉が頭に浮かぶ。
なんだか気恥ずかしくなって、あたしは俯いた。
「そういえば、ミユキ、どうした?」
「あーそうそう。レイジがちゃんと仕事来なさいって。
あの人今忙しいみたいだから。
メールでも良かったんだけど、どんな様子か気になってね」
「わかった。今日、行くって、つたえて」
「アンタ達あたしに頼りすぎよ。まあ良いけど」
2人の会話を聞きながら、そういえばレイジさんのとこで働いてるんだったな…と思い出した。
何をしてるのかは知らないけど。
それからしばらくすると、仕事の準備があるから、と帰ろうとするミユキさんに、あたしは気になっていたことを尋ねてみた。
――いつここを出て行くかも知れないあたしに、
どうしてこんなに良くしてくれるのか。
ずっと、不思議に思っていたこと。