美女と珍獣
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「珍獣さん、晩ご飯何が良いですか?」
カーテン越しに見える空が赤みがかってきた頃合い。
あたしは珍獣さんにそう尋ねた。
同居3日目にして、なかなか板についてきたと思う。
「んー、カレー……」
「カレーですね!
あ、じゃあちょっと買い物に行って来ますね」
冷蔵庫の中に無いと思われる食材を買いに行くため、あたしがそう言って外出の準備をしていると。
「アサカー、おれも」
「え?」
あたしの服の裾を軽く引っぱる珍獣さんに、首を傾げる。
「おれも、行く」
「え?買い物にですか!?」
珍獣さんがスーパーに行くなど想像が出来なくて、あたしは目を丸くする。
「行きたい…」
しきりにそう言う珍獣さんに、断ることが出来ず、2人で家を出た。
「あの、珍獣さん買い物行ったことありますか?」
「おれ、したこと、ない!」
「…………」
妙にそわそわする珍獣さんに、もしやと思い聞いてみると、案の定即答。
一体、珍獣さんって……?
そう思いながらも、あたしはかごの中に食材を入れていった。
「ママー、あのお兄ちゃん見てー」
「ちょっ、見ちゃダメよ…!」
不思議そうに珍獣さんを見つめる子供と、それを咎める母親。
「…………」
珍獣さんを見遣ると、何でもない様子で野菜コーナーを凝視している。
そっか、やっぱ着ぐるみって変だよね。
側にいすぎて感覚が麻痺してた。
それにしても、珍獣さんのあまりに慣れた様子には驚いた。
いつから、こんな感じなんだろう。