美女と珍獣


***


「珍獣さん、晩ご飯何が良いですか?」


カーテン越しに見える空が赤みがかってきた頃合い。

あたしは珍獣さんにそう尋ねた。


同居3日目にして、なかなか板についてきたと思う。



「んー、カレー……」

「カレーですね!
あ、じゃあちょっと買い物に行って来ますね」


冷蔵庫の中に無いと思われる食材を買いに行くため、あたしがそう言って外出の準備をしていると。



「アサカー、おれも」

「え?」


あたしの服の裾を軽く引っぱる珍獣さんに、首を傾げる。


「おれも、行く」

「え?買い物にですか!?」


珍獣さんがスーパーに行くなど想像が出来なくて、あたしは目を丸くする。



「行きたい…」


しきりにそう言う珍獣さんに、断ることが出来ず、2人で家を出た。




「あの、珍獣さん買い物行ったことありますか?」

「おれ、したこと、ない!」


「…………」


妙にそわそわする珍獣さんに、もしやと思い聞いてみると、案の定即答。



一体、珍獣さんって……?



そう思いながらも、あたしはかごの中に食材を入れていった。




「ママー、あのお兄ちゃん見てー」

「ちょっ、見ちゃダメよ…!」


不思議そうに珍獣さんを見つめる子供と、それを咎める母親。



「…………」


珍獣さんを見遣ると、何でもない様子で野菜コーナーを凝視している。



そっか、やっぱ着ぐるみって変だよね。

側にいすぎて感覚が麻痺してた。


それにしても、珍獣さんのあまりに慣れた様子には驚いた。




いつから、こんな感じなんだろう。


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