美女と珍獣
「アサカ、これ、何?」
ぼーっとしていたあたしに、突如珍獣さんは話しかけてきた。
右手には、袋に入ったもやし。
「えっ、えと…それは、もやしだと思いますよ」
「モヤシ?」
うーん…としばらくもやしの袋のパッケージを見つめてから、珍獣さんは勝手にかごの中にそれを入れた。
「え?もやし買うんですか?」
「うん。カレーに、いれて」
「カ、カレーにもやし……」
想像がつかないと思いながらも、一応リクエストなのでそのまま購入。
珍獣さんはどこか嬉しげな様子だった。
帰る途中、何人もの人が彼を振り返った。
驚いた顔をする人。
笑う人。
不審そうに見る人。
どんなに視線を感じようと、彼は全く動じない。
ねえ
珍獣さん……?
「どうして着ぐるみなんですか?」
胸の奥にしまっておくはずだった疑問は、咄嗟に口をついて出た。
ピタ
あたしの数歩前を歩いていた彼の足が、止まった。