美女と珍獣
微妙に重い空気の中、あたしと珍獣さんは家にたどり着いた。
「……アサカ、怒った?」
そう言ってあたしをのぞきこむ彼に、いたたまれなくなって首を横に振る。
「怒ってませんよ。
そんなに悲しそうにしないで下さい」
「ん、アサカー」
よしよしと頭を撫でられる。
構図こそこうだけど、やっぱりあたしは飼い主の心境。
『アサカには、言わないの』
その言葉は気にかかるけど、あたしと珍獣さんは結局ただの奇妙な同居人同士な訳で。
あたしがそんな言葉を必要以上に気にしたって仕方ない。
それにこんな態度をとるってことは、何か言わない理由があるはず。
だからとりあえず今は。
もやし入りのカレーに挑戦!
「じゃあご飯つくりますね!」
そう言って笑顔を見せると、あたしは買い物袋を両手に台所へ駆けていった。
「……ごめん、アサカ」
あたしの後ろ姿を見つめて、小さくそう呟いた珍獣さんにも気付かずに。