美女と珍獣

―パクッ


しばらく物珍しそうにもやしを見つめていた珍獣さんが、それを恐る恐る口に運んだ。


「…………、ん」

「どうですか?初めてのもやしは」


「ん、ふつう」


「…………」


つまんない。

でも確かにここでものすごく美味しい!と感激されても反応に困る。


まあ、いいや。



しばらくその実際に普通な味だったもやしカレーを食べていると。



♪~


「あ、珍獣さん、携帯鳴ってます」

「んー?」


着信音を覚えてしまった珍獣さんの携帯。


それだけ一緒にいるんだ、と妙に感心した。



「誰ですか?」

「………レイジ」


「レイジさん?」


前ここに来たあのホストみたいな人か。

そういえば珍獣さん、その人と働いてるって言ってたな。



「アサカ、おれ、よびだされた」

「あ、そうなんですか。
じゃああたし片づけしてますよ。行ってらっしゃい」


仕事だろう、とあたしは笑顔で手を振った。



「むぅ………」


不服そうな態度の珍獣さんに、首を傾げる。


「アサカ、寂しく、ないの?」

「えっ?」


意外な質問をされ、あたしは考える。


そっか、夜に珍獣さんがいないのって初めてだっけ。



そう考えると、ちょっと寂しいような気もするけど。



「大丈夫ですよ。お仕事頑張って下さいね!」



そんなこと言っても仕方ないだろうと、笑顔を向けると。


―ビシッ


「!?」



でこぴん。


あたしは声にならない声を上げて額をおさえ、珍獣さんを見る。



「アサカの、ばか!」

「なっ……!」


言うが早いが、珍獣さんは玄関に走っていった。



あたしは涙目になりながら、一人その後ろ姿を見つめた






ど、どういうこと?


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