美女と珍獣
ネットカフェを探して宛もなく歩いていると、街の明かりが嘘のように薄暗い路地が目に入った。
いかにも柄の悪い人達がわんさかいそうな予感。
さっさと立ち去ろうと小走りになった途端。
「なにしてんの?」
ケラケラと笑う声に、ぐいっと掴まれた右腕。
「ちょっ、」
振り向くと視界に入った、その見るからにヤンキーな風貌の方々に、嫌悪感を抱いて腕を振り解こうともがく。
「すごい荷物だね。もしかして家出とかー?」
「は、離してよっ!」
右腕をかすかに震わせながら、あたしはそう口にした。
前にもあった、こんな事。
そのときは友達が側にいて、何とか逃げられたけど。
今、かなりヤバいかもしれない。
「つーかマジかわいくね?」
そんなことを言い合いながらあたしの顔をのぞき込み、笑っている男達に背筋がぞくりとした。
気持ち悪いっ。
早く逃げなきゃ……!
腕を掴む力がほんの少し緩んだと同時に、あたしは走り出した。
「……オイ、待てよ!」
舌打ちをしながら追いかけてくる数人の男達。
はやく、どこか人通りのあるところに……っ!
元来た道を引き返していくと、眩しいほどのネオンの光が一気に視界に入ってきた。
目を伏せながらも、追いかけてくる男達から必死で逃げた。