美女と珍獣
理由なんかわからないけど。
ただどうしようもなく苦しくて。
あたしは携帯を握りしめて、ある人に電話をしてみた。
朝だけど、出てくれるかな。
『はい、もしもし。
麻伽ちゃんよね?どうしたの?』
「ミユキさん、すみません。
今からちょっとだけ会えませんか?」
『ええ、大丈夫だけど……』
珍獣さんのことは、彼のことを知る人に聞かないとわからないし。
ここを出て行くことを告げなきゃいけない気がしたから。
急で申し訳ないけど、あたしはミユキさんと会うことにした。
テーブルに一人分の朝食とメモを残して、あたしは珍獣さんに貰った合い鍵を握りしめた。
全然使わなかったな。
ほとんどこの家から出なかったし、この3日間。
それだけ一緒に居たんだよね、珍獣さんと。
物音ひとつしない珍獣さんの部屋の方をしばらく見つめて、あたしはミユキさんとの待ち合わせ場所に向かった。
「麻伽ちゃん、こっちよ」
お洒落なカフェ。
入るのに一瞬ためらったけど、ふいに聞こえたミユキさんの声にほっとして席に着いた。
「こんな時間から、急にすみません」
「いいのよ。気にしないで!
それで、どうしたの?」
「えっと……」
あたしはどうやって話そうか考え込んだ。
もう少し脳内を整理してから来ればよかったな。