美女と珍獣

「アーサカ」


「!」


そのまま門の前にいたら、屋敷の方から声がして、びくっとして振り返るとそこには珍獣さんの姿。



「何、してるの?」

「いや、今ちょっと……」


言葉を濁すと、珍獣さんが首をかしげているのが見えた。


「?はやく、入って?」

「はい……」



何なんだろうと思いつつも、今はもっと重要な話があるんだと考え直し、あたしは珍獣さんの元へ歩み寄った。



「よかった」


あたしが近寄るなり、珍獣さんはあたしの頭をわしゃわしゃと撫でた。

あたしが?を浮かべていると、ゆっくりと手を離し、珍獣さんは静かに言った。



「帰ってこないかと、思った」


「え……」



あたしはどんな顔をしていたんだろう。

わかんないけど、きっと情けない顔なんだろうな。


ちゃんと言えるかな、さよなら。



「アサカ、入ろう?」


「はい」



珍獣さんは気付いているんじゃないか、と思った。


今思えば、あたしがさっきここを出る前の珍獣さんの行動も、気付いていたからこそだったのかも。



きっと寂しがり屋なんだ。


あたしも、彼も。


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