美女と珍獣
大切なことは
その広く立派な家の門を出たところで、あたしの涙腺は決壊した。
手を振っていただろう彼の姿を見れなくて、振り返ることもできなかった。
ばかだ、あたし。
もう後悔してるなんて。
凍てつくような寒さが、心を冷やしていく。
本当になんで。
よりによって珍獣さんに恋したんだろう。
あんなに変わった人で、顔すら見たこと無いって。
ありえなかったはずなのに。
こみ上げる嗚咽を必死に押さえ込み、あたしは美奈に電話した。
ワンコールめですぐに出た美奈。
「もしもしっ、アサカ!?」
「美奈…」
あたしはずるずると鼻水をすすった。